日本語
お問い合わせ

市場クレームから設計変更へ:CAPAループの実際

監査では答えの出ない問い

受託製造先を評価するとき、確認できるものはたいてい確認できます。認証書は検証できますし、ラインは歩けますし、SOPは読めます。難しいのはもう1つの問いのほうです。市場で本当に問題が起きたとき、その工場は実際に何をするのか。どの品質マニュアルにもCAPA手順は書かれています。それが書かれたとおりに動くかどうかは、クレームが届いた日に初めて見⁠え⁠ま⁠す⁠。

そこで手順の条文の説明はやめて、当社の工場で実際に起きた事象を1つ、匿名でお話しします。品目の詳細、顧客名、型番は伏せますが、判断の連鎖は当時のとお⁠り⁠で⁠す⁠。

1台の話か、母集団の話か

市場からの報告はこうでした。家庭用の電子機器の台座に焦げ跡が出ている。1台、1件のクレームです。

いちばん安く済む対応は、個別事象として処理することでした。謝罪し、交換し、案件を閉じる。当社の受付ルールは逆を向いています。単一のクレームは、データがそうでないと言うまで、潜在的なロット問題として扱います。ですから最初の問いは、このお客様にどう納得していただくかではありませんでした。見ているのは1台なのか、母集団なのか、です。

もう1つのルールも同じくらい早い段階で効きます。実像を和らげないこと。判断する立場の人間が、当社側でも顧客側でも、まず事実を聞きます。そして品質事象が顧客の医療機器品質システムに触れる場合は、直ちに先方のQAへエスカレーションし、以降は共同で走ります。悪い知らせは時間を置いても良くなりません。待つことで失うのは、封じ込めがまだ安く済む期間だ⁠け⁠で⁠す⁠。

なぜを、症状の先まで追う

焦げていたのは台座でしたから、手が伸びやすい修正は新しい台座でした。それは修理であって、答えではありません。なぜの連鎖をたどると、損傷は上へ遡りました。台座がひとりでに燃えたわけではなく、熱はその上にあるUSB Type-Cコネクタから来ていました。コネクタが過熱し、台座の材料に溶け込んでいたのです。原因はコネクタ側で、台座は損傷を受けただけ⁠で⁠し⁠た⁠。

台座で止まれば、本当の故障が発生し続ける横で、台座を無期限に交換し続けることになります。根本原因分析はそのループを断つためにあります。答えが再設計できる対象になるまで、なぜを問い続ける。交換できる部品は、まだ答えとして数え⁠ま⁠せ⁠ん⁠。

今回の設計変更

是正は設計そのものに入れました。ECN(設計変更通知)を発行し、コネクタを26ピンから簡素化した6ピンの構成に変更、あわせて電流検出による保護を追加して、異常な電流を検知したら熱が溜まる前に給電を切るようにしました。前者は故障した部品から複雑さを取り除く変更、後者はいつかまた何かが起きうると仮定して、その前に一枚ガードを置く変更です。

いちばん省略されやすい工程

1つの製品を直したからといって、製品ラインが無事とは限りません。ECNの後、同一プラットフォームの他機種を1機種ずつ、同じ弱点について点検しました。うち1機種は当初から6ピン設計で、影響がないことを確認し、それも記録しました。「問題なしを確認した」という事実自体が、書き残す価値のあるものです。

当社の経験では、この水平展開こそCAPA文書からもっとも抜け落ちやすい工程です。故障は出た機種では直り、同じ弱点が姉妹機種にはそのまま残る。供給者を監査するなら、ここが突きどころです。実際のCAPAを1件見せてもらい、水平展開の記録があるかを探してください。当社の工場監査チェックリストにも項目として入れて⁠い⁠ま⁠す⁠。

トレーサビリティが、動揺を計算に変える

残った問いは範囲でした。何台で、どこにあるのか。ISO 13485はロットトレーサビリティを要求しますから、どの製造ロットに旧コネクタが入っていて、各ロットが何台を含むかは記録から正確に言えます。数字そのものは公開しませんし、正直に言えば数字の大小は本質ではありません。重要なのは、その問いに答えが存在したことです。ロットトレーサビリティがなければ、封じ込めは最悪ケースに寄り、市場にあるものすべてが影響を受けた可能性のある対象になります。あれば、事象は境界の引ける、数えられる問題になります。この規格が実務で何を要求するのかは、当社のISO 13485ガイドで扱っています。

SOPは1つ残らず、事故⁠の⁠当⁠て⁠木

この全体の背後にある原則を、社内の言い方でいえば、SOPは1つ残らず事故から生まれた当て木です。監査を通すために書かれた文書の束でしかない品質システムは、誰の役にも立ちません。機能しているときのそれは、瘢痕組織に近いものです。教訓が手順に刻まれ、次の人が同じ痛い思いをして学び直さずに済む。ですから事象を閉じるには「解決したか」だけでは足りません。同じことが同じやり方でまだ起こりうるか、も問います。予防の仕組みがシステムの内側に入り、次に似た兆候が来たとき、前回とは違うプロセスがそれを迎える。そうなって初めて閉じます。

一般化すれば、ループは受付、封じ込め、根本原因(5-Why)、是正、予防、水平展開、クローズレビューと回ります。この一覧に珍しいものは1つもありません。工場と工場の差は、このループを回すことに代価が伴うときでも、まだ回るかどうかです。

生産、R&D、品質保証は1996年から台中市大雅の同一敷地にあり、ISO 13485:2016とISO 9001:2015の認証を保有しています。根本原因の作業がここで速いのは、エンジニアもラインも記録も同じ建物にあるからでもあります。ご自身で判断されたい場合は、お問い合わせからご連絡ください。NDAのもとで、貴社チームにCAPAを1件、最初から最後までご案内します。2営業日以内に一次回答いた⁠し⁠ま⁠す⁠。

FAQ

完全なCAPA記録には何が含まれるべきです⁠か?

最低限、受付時の判定とリスク評価、封じ込め措置、証拠に裏づけられた根本原因(最初に見つかった不良部品ではなく)、ECNを伴う是正変更、姉妹機種への水平展開、そして是正が実際に効いていることの検証です。原因と是正はあるのに水平展開がない文書はよくある欠落で、それだけで多くを語ります。

発注前に、供給者のCAPAが本当に機能しているかをどう確かめますか?

実際にあった案件を1件、匿名化した形で最初から最後まで説明してもらってください。聞くべきは3点です。根本原因が設計のレベルまで届いているか、それとも交換した部品で止まっているか。姉妹機種が点検されたか。ロットトレーサビリティが影響範囲の境界を引いたか。ループを本当に回してきた工場は、準備なしで語れます。

修正(correction)と是正措置(corrective action)はどう違いますか?

修正は影響を受けた製品を扱うこと、たとえば焦げた台座の交換です。是正措置は原因を取り除くこと、つまりコネクタの設計を変えて台座が焦げなくすることです。修正しか入っていないクレーム文書は、CAPAシステムではなく修理日誌です。

お問い合わせ

技術的なご相談の前に NDA を締結いただけます。