実用新案と特許:OEM案件の知財ポートフォリオ設計
最初の試作が上がってきた時に出る質問
最初の実働サンプルが手元に届き、その機構が競合にはできない動きをしている。そこで誰かが「これは出願すべきでは」と言い出します。すぐに二つの問いが続きます。どの種類で出すのか、そして誰の名前で出すのか。
どちらにも万能の答えはありませんが、たどれる筋道はあります。以下は1990年代から自社で出願を続けてきた工場からの見え方です。法的な助言ではなく製造現場の経験としてお読みいただき、実際に方針を固める前には弁理士にご相談ください。
二つの制度は何が違うか
保護の対象。 台湾をはじめ、この制度を持つ多くの国や地域では、実用新案が守るのは物品の形状・構造・組み合わせです。つまり物理的なものです。特許はそこから先、方法、プロセス、組成物、ソフトウェアで実現される技術まで届きます。実用新案が触れられない領域です。
登録までの時間。 実用新案は方式審査を経て短期間で登録されます。特許は新規性と進歩性の実体審査を通るため、その待ち時間は月ではなく年の単位です。見落とされがちな点がひとつ。実用新案は登録時点で実体を審査されていないため、権利を主張する前に技術評価書を用意する必要が生じるのが通例です。
存続期間と費用。 実用新案は出願日から10年、特許は20年。ただし特許は明細書の作成から拒絶理由への応答、登録に至るまで、どの段階でも費用がかさみます。
当社の30年分の出願はどうなっているか
1996年以降、当社は24件を出願しており、いずれも台湾知的財産局(TIPO)で公開されている記録です。内訳は特許1件、実用新案23件です。
その特許1件は2007年に出願した床面清掃装置で、拒絶査定を受けました。以後は実用新案に一本化し、今日までその判断を覆す理由は出ていません。
出願の内容は、その時期に工場が何を作っていたかをそのまま映しています。1996年から2008年までは時計、目覚まし時計、掃除機、ロボット床面清掃機。2010年から2014年までは時計ワインダーの機構。2020年以降は紫外線殺菌、乾燥消毒、温冷マッサージへ移り、2024年から2025年にかけて出願のペースが目に見えて上がっています。
現在有効なのは7件です。ベビー用品向けの携帯型乾燥消毒バッグセット、組み合わせ式の乾燥消毒装置、洗浄殺菌装置、時計ワインダーの駆動減速構造・時計装着構造・回転組み立て構造の3件、そして放熱性に配慮した温冷マッサージ器。
この並びの背後にある考え方は単純です。当社が作るのは機構であり、機構こそ実用新案が守る対象で、しかも製品は特許出願が審査を抜けるよりずっと早く店頭に並びます。
どちらの道が自社の技術に合うか
消費者向け製品の機構・構造まわりの工夫は実用新案が合います。より小さく畳めるリンク機構、放熱の良いハウジング、静かに回る駆動系。登録の速さがそのまま効いてきます。製品サイクルが短く、権利は売っている間に使えなければ意味がないからです。
特許が費用に見合うのは、価値が実用新案の届かないところにある場合です。制御アルゴリズム。材料の配合。歩留まりを変えるプロセス。ライセンス収入を見込む技術や、10年を超えて競合を抑えたい技術も同じです。機器の本当の強みが筐体ではなくファームウェアの挙動にあるなら、実用新案では守る側が逆になります。
同一の対象について両方を出願し、後から選べる国もあります。それが使えるか、使う意味があるかは、工場のエンジニアではなく弁理士に確かめる話です。
誰の名前で出すのか
よく行き当たる誤解が、金型代を負担したのだから生まれた権利も自社のものだ、というものです。金型の所有と権利の帰属は別の問題で、片方を払っても、もう片方は付いてきません。金型の所有そのものがどう決まるかは、金型費用とMOQの記事で扱っています。
共同開発になると、さらに込み入ります。ブランド側が仕様と目標を持ち込み、工場の機構・電子のエンジニアがそれを満たす構造を考え出す。では、その構造を発明したのは誰か。条項がなければこの争いは高くつきますし、決まって最悪の時期に表面化します。デューデリジェンスの最中か、発売の直前です。
ですから先に書いておくことです。案件から生じた権利は誰のものか、出願する権利は誰にあるか、費用は誰が負担するか、相手方にどのライセンスが渡るか、そして関係が終わったときにそれらがどうなるか。当社の案件は最初の図面からNDAのもとで進みますが、この種の話は見積もり段階で片づけておくほうが、量産立ち上げでもめるよりずっと安く済みます。ベース設計のIPがモデルによってどう分かれるかはOEMとODMの記事で扱っており、そもそも何を交渉できるかもそこで変わります。
どこに出すか、そして特許は何のためにあるか
出願は販路に従います。代理店もいない国での登録は、年金を払うだけで何も買えていません。その予算は、実際に数量を担う二つ三つの市場でしっかりした出願をするほうが働きます。
特許に何ができるかも、正直に見ておきたいところです。訴訟に勝たせてくれる場面はほとんどありません。大半の紛争はそこまで行かないからです。特許が与えてくれるのは立場です。ECサイトへの削除申請に添えられるもの、税関が動ける根拠になるもの、競合の弁護士から電話が来たときに相手の口調を変えるもの。守りの資産であり、同時に交渉材料でもあります。
案件のなかでどう扱うか
当社は開発、生産、品質保証が台中・大雅の同じ敷地にあり、1996年からこの場所で、ISO 13485:2016とISO 9001:2015のもと、機構と電子のR&Dを内製し、自社金型を持ち、PCB・PCBA・SMTも同じ建物で行っています。つまり構造の出願で名前が挙がる人間が、そのまま御社の製品を作る人間です。知財の話を設計レビューの場で一緒にできる、ということでもあります。
構想があり、開発に入る前に守るべき中身がどこにあるかを整理したい場合は、お問い合わせください。NDAのもと、2営業日以内に一次回答を差し上げます。製造側から見えているものはお伝えできます。出願戦略そのものは、御社の弁理士の領分です。
よくあるご質問
実用新案は特許より弱いのですか。
弱いというより狭い、が正確です。その範囲内であれば、登録された実用新案も権利行使できます。手放すのは、長い存続期間と、方法や材料まで届く射程、そして国によっては権利行使の前に技術評価書を求められる手間です。
OEM案件から生まれた権利は誰のものになりますか。
契約に書かれたとおりです。金型代を払った側でもなければ、自動的にブランド側でも工場側でもありません。契約が沈黙していれば、国ごとに異なる原則と、誰が発明したかについての当事者の言い分に委ねられます。
将来入るかもしれない市場すべてに出願すべきでしょうか。
見合うことはまれです。出願にも維持にも費用がかかりますし、行使できない権利にできることは多くありません。まず数量を担う市場を押さえ、販路が育ってから見直すのが現実的です。
技術的なご相談の前に NDA を締結いただけます。