問い合わせに何を書くと、答えが返ってくるか
なぜ最初の一通がテンポを決めるのか
お問い合わせには二営業日以内に初期回答をお返ししています。ただし、その回答が役に立つかどうかは、届いた内容でほぼ決まります。
そのままエンジニアに回せる一通もあれば、製品が何なのかを聞き出すだけで四通も五通もかかる一通もあります。後者はその多くが三通目あたりで静かになります。関心が失われたからではありません。「これはいくらか」という問いは、「これ」が何か分からないままでは当て推量にしかならず、それは双方に伝わるからです。
差がつくのは案件の大きさでも会社の規模でもなく、最初の一通に作ろうとしている物が書かれているかどうかです。
判断の大半を担う五項目
1. 製品が何か、カテゴリーではなくその物
「医療機器」では何も絞れません。「陰圧創傷用吸引ポンプ」ならほぼ絞りきれます。ポンプがあり、電子回路があり、密閉が要る筐体があり、その三つそれぞれに規制の道筋が付いてきます。
仕様書は要りません。その物を一文で説明するだけで、営業が受け付ける前にエンジニアが読み始めます。
2. どの段階にいるか
コンセプト、設計中、量産準備、他社からの切り替え。この四つはまったく別の対話を開きます。
**コンセプト段階は不利ではありません。**これははっきり書いておく価値があります。完成した図面がないと声をかけづらいと考えて、アイデアを何か月も抱えたままの方が少なくないからです。その必要はありません。早い段階の相談はたいてい遅い段階より安く済みます。やり直しが最も高くつく決定(筐体の分割、基板の配置、どの認証を通すか)は、誰かが議題に載せるかどうかに関係なく、早い時期に決まってしまうからです。
案件を止めるのは早すぎることではなく、その物が何なのか誰にも言えないことです。
3. どの工程が必要か
射出成形、電子実装、その両方、あるいはまだ分からない。成形筐体と実装基板が要ると分かっているなら、そう書くだけでやり取りが一往復まるごと減ります。
自分の製品がどの工程を伴うのか分からない場合、それ自体が書く価値のある情報です。この対話を見積りの側からではなく設計の側から始めるべきだと分かります。
4. どの市場に出すか
この項目は他の四つより飛ばされやすく、そして多くの方が思うより影響が大きい項目です。対象市場が認証の道筋を決め、認証の道筋が日程を決め、コストの小さくない部分も決めます。EU向け、米国向け、両方向けは、同じ筐体をまとった三つの別案件です。
「まず EU、うまくいけば後で米国」は良い答えです。書かないよりはるかに良い。書かなければ国内のみと読まれ、見積りはその前提の上で組まれます。
5. 年間数量はおよそどれくらいか
幅で構いません。桁が分かるだけでも構いません。年間数量は、金型の話を机上から数字に変えるものです。何個取りにするか、どの等級の鋼を使うか、その型が償却できるのか、それとも長く抱える固定費になるのか。
本当にまだ分からなければ、分からないと書いてください。コンセプト段階ではごく普通の答えです。
→ 数量が取り数と単価にどう変わるか:金型費と MOQ の考え方
まだ埋められない欄について
以上の五項目は入場試験ではありません。試験として扱うと、最も困った第一通ができあがります。準備ができているように見せるために作られた、自信ありげな数字の一式です。
「未定」と書くほうが、推測の数字より速く進みます。「年間数量は未定です」は一行で済みます。ところが推測の数量は、見積り全体を誤った前提の上に静かに組み立ててしまい、訂正が表に出るのはたいてい金型の話が終わったあとです。もともと存在しなかった数字のために、その往復はかなり高くつきます。
市場も日程も目標価格も同じです。分かることは書き、分からないことは名指しする。そうすれば回答は現実に合わせて返ってきます。あとで双方が解きほぐす必要のある作り話にではなく。
本当に扱いにくいのは、製品そのものがまだ形になっていない一通です。段階が早いのは構いません。数字が曖昧なのも構いません。難しいのは、具体的な物がひとつも入っていない一通です。もしそこにいるなら、見積りより先に成立性を尋ねてください。「まず実現できるかを見極めたい」と直接書くほうが、まだ存在し得ない価格を求めるより遠くまで進みます。
なぜこの五項目を尋ねるのか
何のための質問なのか知りたいのは当然です。当社の工程は、誰かが図を描き始める前の位置づけの段階から始まります。製品は何か、誰に向けるか、どの市場に出すか、どの年間数量で計画するか。以降のすべての決定がこの四つの答えに乗ります。
取り数は数量から決まります。材料の選定は製品と市場から決まります。認証の道筋は市場から決まります。金型の予算はそれら全部で決まります。これらの入力なしに出せる見積りは、役に立たないほど幅の広い数字にしかなりません。広い幅は親切ではなく、本当の対話を一か月先送りするだけです。
→ これらの決定を誤った順序で行うとどうなるか:OEM 製品開発はどこで壊れるか
動き出す一通はどんな形か
短くて構いません。だいたいこの形です。
家庭用の据置型 UV-C 機器を開発中で、現在はコンセプト段階です。射出成形の筐体と、UV-C モジュールを載せた実装基板が必要です。まず EU、その後おそらく米国に出します。年産二万から三万で計画していますが、これは概算です。図面はまだなく、インダストリアルデザインのスケッチのみです。
五行。機密は何も含まず、図面も添付せず、ひとつの数字は概算だと明示されています。これだけで適切なエンジニアに回せますし、最初の回答で先に議論すべき認証の論点を挙げられ、金型についても誠実な話ができます。
書かれていないことにもご注目ください。カタログも価格表も求めていません。この二つはむしろ有用な回答が最も難しい依頼です。カタログは既存製品についての問いに答え、価格表は既存部品についての問いに答えるものですが、ここで述べられている物はそのどちらでもないからです。
→ OEM と ODM のどちらで進めるか検討中の場合:OEM と ODM:MOQ、金型、IP、日程の違い
返ってくるもの
案件に応じて、技術的な議論の前に秘密保持契約を交わします。回答は、実際にその案件を担当するエンジニアからのもので、営業が要約して伝えるものではありません。そして二営業日以内の初期回答です。
その回答に何が書かれているかは、届いた内容次第です。それがこのページの趣旨です。上の五項目があれば、本題に入れます。これらの工程が同じ屋根の下で完結するか、対象市場がどの認証の道筋を意味するか、金型の議論をどこから始めるべきか。
なければ、誠実な回答は質問の一覧になります。それでも構いません。ただ、本来より二週間ほど余計にかかるだけです。
技術的なご相談の前に NDA を締結いただけます。